Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖 (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.957 caratteri · 114 schermate
外にいた客引の女が、それと知って、あわてて洗足水だらいをそこへすえると、帳場のわきに立って眼を丸くしていた主の善七、びっくりして店先へ飛んでくるなり、
「ばか!」と、女をどなりつけた。
「もうどの部屋もいッぱいで、御案内する座敷もないのに、なんでお断りしないのだ。気のきかないやつめ、ましてやお武家様方へ、しッ、失礼千万な」
叱られた女は、いったい、何がどうした叱言なのかわからないが、客商売の断るかけひきはままあるので、そのまま、口をつぐんでいる。
「どうも申し訳がございません」
善七は如才なく両手をついて、
「せっかくでございますが、上も下も、折悪しくふさがりまして、御用に足りますような座敷は一つもござりませぬ。まことに申しかねますが、どうぞほか様へひとつお越しのほどを」
三人は黙って顔を見合せたが、こう不自然な断り方をされてみると、一層、ここへ逃げこんだ男女がてッきりそれと思われるし、善七の方にしてみれば、そう疑ってくる三人組の侍が、ますます道中稼ぎの浪人者とみてとれる。
「そうか、座敷がないとあらば、無理に泊ろうとはいわぬが……」
と天堂一角、傷の片腕を胸に曲げ、熊谷笠のうちから亭主の面を睨みつけた。