Classici giapponesi con furigana
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わし
鷲
岡本 綺堂
Leggi 鷲 (わし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 144.476 caratteri · 290 schermate
男はわたしを見て俄かに顔をそむけたが、女は平気で何か笑いながら行き過ぎた。
「曽田屋の気違いめ、又あの保険屋とふざけ散らしているな。」と、若い書記は二人のうしろ姿を見送って、幾分の嫉妬もまじっているように罵った。
男は保険会社の社員の氷垣で、女は曽田屋の妹娘のお時であることを、わたしも知っていた。しかも「気違い」という言葉が私の注意をひいた。
「気違いですか、あの娘は……。」
「まあ、気違いというのでしょうな。」と、老いたる小使は苦笑いをしながら答えた。「東京の先生は御存じありますまいが、曽田屋のむすめ姉妹といえば、ここらでは評判の色気違いで……。今夜もあの通り保険屋の若い男と狂い廻っている始末……。親たちや兄さんはまったく気の毒ですよ。」
私もまったく気の毒だと思った。揃いも揃って娘二人があの体たらくでは、親や兄は定めて困っているに相違ない。普通の人は単に、色気違いとして嘲り笑っているに過ぎないらしいが、わたしから観ると、かの娘らは一種の精神病者か、あるいはヒステリー患者のたぐいであった。みだりに嘲り笑うよりも、むしろ気の毒な痛ましい人々ではあるまいかと思われた。