Classici giapponesi con furigana
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むぎわらぼうし
麦藁帽子
山本 周五郎
Leggi 麦藁帽子 (むぎわらぼうし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6888 caratteri · 14 schermate
「昨日はたくさん漁があったかね」
斧田が近寄りながら訊くと、老人は彼のために少し体をずらせて、そこへ腰をかけるようにとさし示した。
「日並が悪いでどうも喰いがたたねえ、昨日はひとつもあげなかっただあ、ところ島せえってこの沖に寄り場があるで、あそこなら餌を換える暇もないほど釣れるだがね、――お客様は対洋館に泊ってござるんかの」
「そう、煙草を一本どうだ」
斧田はケースの中から煙草を抜出して与えた、老人は眼を細くして受取るとそっと鼻へもって行った。
「ほう、舶来だねえ、いつかもこんな吸口の付いたやつをすったことがある、さあいつのことだったか、吾八が崖から堕ちる前だったかあとだったか――」
斧田が火をつけてやると、老人は旨そうに頬をへこませて二三服ふかしたが、すぐに火をもみ消して外套のポケットへしまった。
「わしはいつでもここに来ているだで、退屈なときには遊びにござるがいい。よかったら吾八の話でも聞かせるべえから」
「何かあったのかね」
「わしの屋敷で使っていた下男だがのう、猿の祟りで崖から堕ちて白痴になってしまっただ、かわいそうに良い男だったが、――ずっと前、そうだ、柿の生ってる時分だっただ」