Classici giapponesi con furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Leggi 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.256 caratteri · 77 schermate
花火はつづいて上る。
然し路地の内は不思議なほど静かである。表通りに何か事あれば忽ちあっちこっちの格子戸の明く音と共に駈け出す下駄の音のするのに、今日に限って子供の騒ぐ声もせず近所の女房の話声も聞えない。路地の突当りにある鍍金屋の鑢の響もしない。みんな日比谷か上野へでも出掛けたにちがいない。花火の音につれて耳をすますとかすかに人の叫ぶ声も聞える。わたしは壁に張った草稿を読みながら、ふと自分の身の上がいかに世間から掛離れているかを感じた。われながら可笑しい。又悲しいような淋しいような気もする。何故というにわたしは鞏固な意志があって殊更世間から掛離れようと思った訳でもない。いつとなく知らず知らず斯ういう孤独の身になってしまったからである。世間と自分との間には今何一つ直接の連絡もない。
涼しい風は絶えず汚れた簾を動かしている。曇った空は簾越しに一際夢見るが如くどんよりとしている。花火の響はだんだん景気がよくなった。わたしは学校や工場が休になって、町の角々に杉の葉を結びつけた緑門が立ち、表通りの商店に紅白の幔幕が引かれ、国旗と提灯がかかげられ、新聞の第一面に読みにくい漢文調の祝辞が載せられ、人がぞろぞろ日比谷か上野へ出掛ける。