일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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やもりものがたり

やもり物語

寺田 寅彦

寺田 寅彦의 やもり物語(やもりものがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 4,340자 · 9화면

아오조라 문고

女が去った後自分は立って雨戸を一枚あけて庭を見た。霧のように細かな雨が降っている。何処かで轡虫の鳴くのが静かな闇に響く。夢から醒めたような心持である。戸袋のすぐ横に、便所の窓の磨硝子から朧な光のさすのに眼をうつすと、痩せたやもりが一疋、雨に迷う蚊を吸うとてか、窓の片側に黒いくの字を画いていた。

その後田舎へ帰ってからも、再び東京に出た後も、つい一度もやもりというものを見なかったが、駒込の下宿に移って後、夏も名残のある夜の雨にこの暗闇阪のやもりを見つけた時、十九の昔の一夜がありあり思い出された。あの後父が再び上京して帰った時の話の末に、お房と云う女中は縁あって或る大尉とかの妻になったと聞いた。事によれば今も同じ東京に居るかも知れぬ。彼は云わば玉の輿にのったとも云われようが、自分の境遇は随分変った。たとえ昔のお房に再会するような事があっても、今の自分を十年の昔豪奢を尽した父の子とは誰れが思おう。やもりを見て昔を思い出すと運命のたよりなさという事を今更のように感じる。そしてせっかく風呂に入って軽くなった心を腐らしてしまうのであった。

やもりは雨のふる夜ごとに暗闇阪の街燈に出ているが、いつ何処から這い上がるとも知れぬ。