후리가나로 읽는 일본 고전
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いちのくらさわしょうめんのとうはん
一ノ倉沢正面の登攀
小川 登喜男
小川 登喜男의 一ノ倉沢正面の登攀(いちのくらさわしょうめんのとうはん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 5,722자 · 12화면
身を寄せる岩陰もない岩壁に、術もなく小鳥のように立ちすくんだ三人は、ロープを引緊めたまま言葉もない。濡れそぼるままに懸崖に寄り添って、身のまわりを立籠める灰色の霧を見詰めていると、何かしら無限の彼方に吸込まれるような無気味な感がする。しかしそれも段々と快い放心に変って行く。
随分長い時が経ったように思われた。やがて雨足も弱って霧が明くなり、途切れ始めた雲の中に、遠く笠ヶ岳の頭が夢のように浮き出した時は救われたように感じた。間もなく市ノ倉岳の斜面に薄日がさすと、ほっとした明い気持になって、再び行動が開始され、ロープがたぐられる。もう八時間もの登攀を続けているので、この濡れた岩は実際困難であった。幾度かロープを引緊めては、かなりの時間を要して登って来る。
漸く胸壁の上の草の生えた緩斜面へ着いた頃は夕暮近く、霽れ間に見える陽に照らされた山の色は非常に冴えて、夜の近い事を指示していた。最後の飯を分ち、暫く休むと、そそくさと濡れてこわばったロープを引ずりながら上へと急ぐ。岩場は終っていた。しかし急な草付は濡れたためか辷り勝で、同時に行動する事を許さない。やがて草は笹に変った。