후리가나로 읽는 일본 고전
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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 二つの途(ふたつのみち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 51,102자 · 104화면
彼はその光りに心の眼を向けた。縋りつくように見つめた。……生きるということが、生きてるということが、如何に嬉しいかを彼は知った。
顧みると、信子が顔を俯向けながら坐っていた。油気の失せた髪がかさかさに乱れて、その下から死人のような艶のない顔が見えていた。啓介は瞳を定めた。額の皮膚が濡いを失って硬ばって居り、眼の下には黒い隈が出来、頬には深い筋がはいって、窶れた筋肉が一々妙に浮上っていた。そしてそのまま彼女はじっとしていた。
啓介は一種の慄えを感じた。眼の奥が熱くなってきた。眼を閉じると、眼瞼の中が明るかった。きらきらする光りの点が無数に渦巻いた。眼を開くと、室内は朝の光りに隅々まで明るかった。
信子が朝の仕度に立って行くと、啓介は静に身体を動かした。寝返りをしてみたり、仰向に寝てみたりした。動く度毎に、手足の指先まで、細かい神経の網の目が眼覚めてゆくのを感じた。
「僕はどの位眠っていました?」と彼は看護婦に尋ねた。
「一昨日の晩からですわ。」
「一昨日の晩から!」と彼は口の中でくり返した。然し時の観念がぼやけていた。同じように連続した時間のみが存在していた。