후리가나로 읽는 일본 고전
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
山本 周五郎의 契りきぬ(ちぎりきぬ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 32,757자 · 66화면
――伊代さんにだけでも手紙を書いておこうか、あんなにお世話になったのだから。
こう考えて机に向ったが、事実を書くには忍びないし、これ以上ひとを偽るのもいやだし、結局は筆を投げてしまった。
――十時の鐘を聞いてまもなく、おなつは寝た。今夜きりだから起きていて世話をしたいが、そうすると却ってみれんが出そうに思えた。
――このままがいい。このまま会わないほうがいい。灯を暗くして眼をつむった。雨はまだ降っていた。やや肌寒いくらいの夜で、しみいるような雨の音のなかに、絶え絶えの、かぼそい哀れなこえで、こおろぎの鳴いているのが聞えた。客の接待で疲れたのだろうか、なにも思うまいと心をおちつけ、かたく眼をつむっているうちに案外はやく眠ったらしい、――なにか夢をみていて、誰かに呼ばれているのだが、なかなか眼がさめなかった。
「――なつ、……なつ」
こうはっきりと声が聞え、びっくりして眼をあいた。するとついそこに精之助が立ってこちらを見ていた。――おなつは本能的に夜具で胸を押えながら、それでもすばやく起きなおった。
「済まないが酒のしたくをして来て呉れ」
精之助はそう云ってすぐに去った。