후리가나로 읽는 일본 고전
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
山本 周五郎의 春いくたび(はるいくたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 70,094자 · 142화면
三の一
「あのお侍さまは、もし明朝までに来なかったら、湯沢の柏屋にいる沖田伊兵衛という人のところへ、とおっしゃいました。追手が来たのでそのあとはうかがいませんでしたけれど、そこへとどけてくれというおつもりに違いないと思いますの」
「もし途中でみつかったら」
「いえ、裏の断崖の水汲道をつたって、杉坂を越えれば佐竹様の御領分です。大丈夫みつからずに行って来られますわ」
「では早いほうがいいな、――いや待て!」
久右衛門はきっと道のほうを見やった。
「……なんですの」
「見張の者がいる」
おゆきが驚いてふり返ると、道をへだてた斜面の雑木林の中で、木陰にさっと身をかくした者があるのをみとめた。あいだが遠いので話はきこえまいが、今までこっちのようすを見張っていたらしい。
おゆきはそ知らぬ顔で立つと、茶釜の側へ行って焚木をくべながら、静かな美しい声で唄いだした。
やぐら峠は七曲り
谷間七つは底知れず
峰の茶屋まで霧がまく……。
三の一
雲ひとつない空にこうこうと月がかがやいていた。
谿谷をはさんだ峰々は墨絵のおぼろに似て、あるいはゆるやかな、あるいはけわしい線を描きつつ酢川岳のほうへ夢のように霞んでいく。