후리가나로 읽는 일본 고전
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
島崎 藤村의 桜の実の熟する時(さくらのみのじゅくするとき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 111,569자 · 222화면
捨吉の上京を促した吉本さんは名高い雑誌の主筆で、同時に高輪の浅見先生の先の奥さんが基礎を遺した麹町の方の学校をも経営していた。吉本さんは曽て浅見先生の家塾に身を寄せていたこともあるという。捨吉に取ってのこの二先輩はそれほど深い縁故を有っていた。捨吉が初めて吉本さんに紹介されたのも、浅見先生の旧宅で、その頃の彼はまだ金釦のついた新調の制服を着ていた程の少年であった。
麹町に住む吉本さんの家を指して、捨吉は田辺の留守宅の方から歩いて行った。自分で自分の小さな生涯を開拓するために初めての仕事を宛行われに訪ねて行く捨吉の身に取っては、涯しも無く広々とした世の中の方へ出て行こうとするその最初の日のようでもあった。彼は久松橋の下を流れる掘割について神田川の見えるところへ出、あの古着の店の並んだ河岸を小川町へと取り、今川小路を折れ曲った町の中へ入って行った。京橋日本橋から芝の一区域へかけては眼をつぶっても歩かれるほど町々を暗記じていた彼にも、もう神田へ入ると稀にしか歩いて見ない東京があった。九月下旬の日あたりは行く先の入組んだ町々を奥深くして見せていた。今川小路と九段坂の下との間を流れる澱み濁った水も彼の眼についた。