후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 112,073자 · 223화면
甲斐はやさしくいっておいで、と云った。
甲斐が夜具の中へ横になると、おくみは屏風をまわし、ぼんぼりを、夜具のほうへ光のささないように、脇へ直してから出ていった。甲斐は冴えた眼で、じっと天床を見まもっていた。殿中でいちどだけ見た松平信綱の風貌が、ふしぎなほど鮮やかに、記憶のかなたからうかびあがって来た。甲斐は枕の上で頭を振り、眼をつむった。
おくみはまもなく戻って来た。白の寝衣に鴇色の絞りの扱帯をしめ、髪を解いていた。化粧は直したらしいが、口紅はきれいにぬぐってある。甲斐は眼をつむったまま「おいで」と云った。おくみは屏風をそっとまわし、それから、甲斐の脇へ横になった。甲斐は左の腕を伸ばして、おくみを静かに抱いた。おくみは身ぶるいをしながら、十一年めに、と囁いた。
「十一年めに、初めて――」
そして甲斐に抱きつこうとしたが、突然、顔をあげて枕もとを見、「きゃっ」と叫びながらはね起きた。あまりに突然であり、その叫び声も高かったので、甲斐もわれ知らず起き直った。
「そこに、いまそこに」とおくみは寝間の隅の暗がりを指さした。
「そこにどうしたんだ」
「娘がいたんです。