후리가나로 읽는 일본 고전
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さんじゅうにこく
三十二刻
山本 周五郎
山本 周五郎의 三十二刻(さんじゅうにこく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 15,273자 · 31화면
二
またそれを押切ることのできない身分の懸隔もあって、離別とも、一時の別居ともつかぬ形のまま年を越し、すでに弥生なかばの今日に至っているのであった。
「母さま、宇女は疋田へ帰ります」
彼女は仏壇に香をいて合掌した。
「家の事を頼むと云って、良人は安心して出府いたしました。いま疋田には大変な騒動が起っております。わたくしこれからまいりますが、今度はもう戻ってはきません。お別れでございます」
眼を閉じて、ややしばらく頭を垂れていたが、やがて立上ると、包を背にくくりつけ、長押の薙刀を取下ろして玄関へ出ていった。
「……宇女」
金之助がそっと追ってきた。
「やはり行くか」
「兄上さま」
宇女は振返って兄を見上げた……微笑さえ含んだ静かな眼であった。金之助も愛情の籠った眼で妹を瞶めながら頷いた。
「よし行け、骨は拾ってやるぞ」
二
将監台下にある疋田家は沸返っていた。
家士に鎧櫃を背負わせた老人や、具足を着け、大槍を担いだ若武者や、騎馬で乗りつける人々が、八文字に押開いた表門の中へ踵を接するばかりに吸込まれていく……その度に、門前から奥まで到着した人の名が呼上げられ、高々と歓声があがった。