후리가나로 읽는 일본 고전
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ききょらい
帰去来
太宰 治의 帰去来(ききょらい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 15,477자 · 31화면
中畑さんが、そのような呉服屋に勤めているのを私は、その時まで知らなかったのである。中畑さんは、その薄暗い店に坐っていて、ポンポンと手を拍って、それから手招きしたけれども、私はあんなに大声で私の名前を呼ばれたのが恥ずかしくて逃げてしまった。私の本名は、修治というのである。
中畑さんに思いがけなく呼びかけられてびっくりした経験は、中学時代にも、一度ある。青森中学二年の頃だったと思う。朝、登校の途中、一個小隊くらいの兵士とすれちがった時、思いがけなく大声で、
「修ッちゃあ!」と呼ばれて仰天した。中畑さんが銃を担いで歩いているのである。帽子をあみだにかぶっていた。予備兵の演習召集か何かで訓練を受けていたのであろう。中畑さんが兵隊だったとは、実に意外で、私は、しどろもどろになった。中畑さんは、平気でにこにこ笑い、ちょっと列から離れかけたので私は、いよいよ狼狽して、顔が耳元まで熱くなって逃げてしまった。他の兵隊さんの笑い声も聞えた。
その、呼びかけられた二つの記憶を、私は、いつまでも大事にしまって置きたいと思っている。
昭和五年に東京の大学へはいって、それからは、もう中畑さんは私にとって、なくてはならぬ人になってしまっていた。