후리가나로 읽는 일본 고전
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
堀 辰雄의 幼年時代・晩夏(ようねんじだい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 85,965자 · 169화면
私はなんの期待もなしに、黙って彼についていった。しかし、彼が或る大きな溝を越えて、私を連れ込んだ横丁は、ことによるとその奥で私が最初の幼時を過ごした家のある横丁かも知れないと思い出した。私は急に胸をしめつけられるような気もちになって、しかしなんにも言わずに彼についていった。二三度狭苦しい路次を曲った。と、急に一つの荒れ果てた空地を背後にした物置小屋に近い小さな家の前に連れ出された。私はその殆ど昔のままの荒れ果てた空地を見ると、突然何もかもを思い出した。――彼が自分の家だといって私に示したのは、それは昔私の家の離れになっていた、小さな細工場をそれだけ別に独立させたものにちがいなかった。その一間きりらしい家の中では、老父が一人きり、私達を見ても無言のまま、せっせと自分の仕事に向っていた。それは履物に畳表を一枚々々つける仕事だった。――その家というのもほんの名ばかりのような小屋から、もと私達の住んでいた母屋とその庭は、高い板塀に遮られて殆ど何も見えなかった。唯、その板塀の上から、すっかり葉の落ちつくした、ごつごつした枝先をのぞかせているのは、恐らくあの私の大好きだった無花果の木かも知れなかった。