후리가나로 읽는 일본 고전
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
島崎 藤村의 桜の実の熟する時(さくらのみのじゅくするとき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 111,569자 · 222화면
先輩の吉本さんから寄してくれた返事だ。嬉しさのあまり、彼は伊勢崎屋の帳場の机の上で何度となくその手紙を繰返し読んで見た。不似合な奉公から、益のない骨折から、慣れない雑貨店の帳場から、暗い空虚な土蔵の内の昼寝から、僅かに出て行かれる一筋の細道がその手紙の中にあった。
幾度か捨吉は小父さんの前に、吉本さんからの手紙を持出そうとした。そうしては躊躇した。例のように捨吉が帳場の台の上に坐ってポツポツ売揚をつけていると、小父さんは団扇づかいで奥の方から帳場の側へ肥った体躯を運んで来た。小父さんも機嫌の好い時だった。第一、姉さんが素晴しい元気で、長煩いの後の人とも思われないということは、小父さんがよくこぼしこぼしした、「米の病気は十年の不作」を取返し得る時代に向いて来たかのようであった。おまけに店の評判はますます好い方だし、どうやら隣家の土蔵にも好い買手がついたと言うし、静岡からの新荷は景気よく着いたばかりの時だ。小父さんの笑声は一層快活に聞えた。
「小父さん、僕は御願いがあります」
と捨吉は帳場の台の上から恩人の顔を見て言って、その時吉本さんからの手紙の意味を切出した。