후리가나로 읽는 일본 고전
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
富田 常雄의 消えた受賞作 直木賞編(しせい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 17,806자 · 36화면
老人のわしが、奈世の恋人であるはずもなく、そんな事を望みもせぬ。商売女でもない奈世に手管を求めるのも無理とは知っているし、わしだけしか知らぬ奈世に男と女の歓びを、顔や体に現わすように要求するのも、これ又、無理なことではあろうけれど、他の女達はそうでもなかったのに、奈世だけは不思議に眉一つ、頬一つ崩さず、白い顔を斜めに向け眼を軽く閉じたまま、しんと静まりかえって、やがて、弱々しく、わしが身を引くまで、冷酷な商売女か、人形の様に身を任かせて居た。わしは、奈世が苦しみを堪えて居るのかと思い、その旨を囁くと、
「そんなことは決して御座いません、御前様」
と、ゆっくり答える。その反対かを囁くと、
「わかりませんのでございます。御前様」
もの悲しそうにすら聞える口調で言うのだ。
「では、先々もこのままでよろしいな」
「はい」
わしは、この様な女の病気があることに思いつき、その後は何にも言わなかった。
巣鴨から帰って、居間に入った時、敷居に両手を突いて、奈世は恭々しく、
「お帰り遊ばせ、御前様」
と、言い、わしは出所して始めての暖かく恭謙な挨拶を受けたが、その時、眼をあげた奈世はわしの眼にぶつかると、わしにもはっきりとわかる程に顔を赫らめた。