후리가나로 읽는 일본 고전
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井 荷風의 荷風随筆集(上)(かつしかみやげ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 133,224자 · 269화면
私は東京中の往来の中で、この道ほど興味ある処はないと思っている。片側は樹と竹藪に蔽われて昼なお暗く、片側はわが歩む道さえ崩れ落ちはせぬかと危まれるばかり、足下を覗くと崖の中腹に生えた樹木の梢を透して谷底のような低い処にある人家の屋根が小さく見える。されば向は一面に遮るものなき大空かぎりもなく広々として、自由に浮雲の定めなき行衛をも見極められる。左手には上野谷中に連る森黒く、右手には神田下谷浅草へかけての市街が一目に見晴され其処より起る雑然たる巷の物音が距離のために柔げられて、かのヴェルレエヌが詩に、
かの平和なる物のひびきは
街より来る……
といったような心持を起させる。
当代の碩学森鴎外先生の居邸はこの道のほとり、団子坂の頂に出ようとする処にある。二階の欄干に彳むと市中の屋根を越して遥に海が見えるとやら、然るが故に先生はこの楼を観潮楼と名付けられたのだと私は聞伝えている。(団子坂をば汐見坂という由後に人より聞きたり。)度々私はこの観潮楼に親しく先生に見ゆるの光栄に接しているが多くは夜になってからの事なので、惜しいかな一度もまだ潮を観る機会がないのである。