후리가나로 읽는 일본 고전
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井 荷風의 荷風随筆集(上)(かつしかみやげ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 133,224자 · 269화면
高い土塀と深い植込とに電車の響も自ずと遠い嵐のように軟げられてしまうこの家の茶室に、自分は折曲げて坐る足の痛さをも厭わず、幾度か湯のたぎる茶釜の調を聞きながら礼儀のない現代に対する反感を休めさせた。
建込んだ表通りの人家に遮ぎられて、すぐ真向に立っている彼の高い本願寺の屋根さえ、何処にあるのか分らぬような静なこの辺の裏通には、正しい人たちの決して案内知らぬ横町が幾筋もある。こういう横町の二階の欄干から、自分は或る雨上りの夏の夜に通り過る新内を呼び止めて酔月情話を語らせて喜んだ事がある。また梅が散る春寒の昼過ぎ、摺硝子の障子を閉めきった座敷の中は黄昏のように薄暗く、老妓ばかりが寄集った一中節のさらいの会に、自分は光沢のない古びた音調に、ともすれば疲れがちなる哀傷を味った事もあった。
しかしまた自分の不幸なるコスモポリチズムは、自分をしてそのヴェランダの外なる植込の間から、水蒸気の多い暖な冬の夜などは、夜の水と夜の月島と夜の船の影とが殊更美しく見えるメトロポオル・ホテルの食堂をも忘れさせない。世界の如何なる片隅をも我家のように楽しく談笑している外国人の中に交って、自分ばかりは唯独り心淋しく傾けるキァンチの一壜に年を追うて漸く消えかかる遠い国の思出を呼び戻す事もあった。