일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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しじみだに

蜆谷

山本 周五郎

山本 周五郎의 蜆谷(しじみだに)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 13,957자 · 28화면

아오조라 문고

下り坂にかかると沢の音が聞こえてきた。蜆谷の流れである。琵琶湖に向かって下る鈴鹿山脈の支峻が、もうほとんど平野に接する地形で、谷といっても深くはない、高さ三十間ほどのなだらかな丘と丘にはさまれた峡間を、犬上川へ落ちる川があって、質のよい蜆が多くとれる。湖畔の村々へ種蜆として出すくらいで、蜆谷という小名もそこからきたのだろう、子供のころから二十余年、朝な夕なに耳なれたその水音を聞いて、弥之助は胸がいっぱいになり涙がこみあげてきた。

――とうとう帰って来た、生きてあの水音を聞くことが出来た。

心の中でそう呟やきながら、杉林をぬけくぐりつつかなり勾配の急な坂を下りていった。……土橋を渡り、平地へ出たところから麻畑になる、彼は裸になったその麻畑の細い畦道へはいり、藪をまわって地蔵堂の横へ出た、そこから一段低くなった杉林の中に、自分の家があるのだ。彼は道なりにゆくのがもどかしくて、地蔵堂を過ぎたところから下の畑へとびおりた、もうひとまたぎだ、杉林をつきぬければわが家の背戸である。しらみはじめた未明の光のなかに、もう家の屋根が見える。

――おっ母さん。

彼はそう呼びたい気持でかけだしたが、杉林を出ようとして足を止めた。