후리가나로 읽는 일본 고전
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
永井 荷風의 麻布襍記 ――附・自選荷風百句(さとう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 37,256자 · 77화면
老境に入って俄に半生慣れ親んで来たものを棄て排けるは真に忍び難い。年老いては古きをしりぞけて新しきものに慣れ親しもうとしても既にその気力なく又時間もない。
珈琲と共にわたしはまた数年飲み慣れたショコラをも廃さなければならぬ。数年来わたしは独居の生活の気儘なるを喜んだ代り、炊事の不便に苦しみいつとはなく米飯を廃して麺麭のみを食していた。塩辛き味噌汁の代りに毎朝甘きショコラを啜っていた。欧洲戦争の当時舶来の食料品の甚払底であった頃にも、わたしは百方手を尽して仏蘭西製のショコラを買っていたのである。
巴里の街の散歩を喜んだ人は皆知っているのであろう。あのショコラムニエーと書いた卑俗な広告は、セーヌ河を往復する河船の舷や町の辻々の広告塔に芝居や寄席の番組と共に張付けられてあった。わたしは毎朝顔を洗う前に寝床の中で暖いショコラを啜ろうと半身を起す時、枕元には昨夜読みながら眠った巴里の新聞や雑誌の投げ出されてあるのを見返りながら、折々われにもあらず十幾年昔の事を思出すのである。
巴里の宿屋に朝目をさましショコラを啜ろうとて起き直る時窓外の裏町を角笛吹いて山羊の乳を売行く女の声。