후리가나로 읽는 일본 고전
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いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
北条 民雄의 いのちの初夜(いのちのしょや)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 31,366자 · 63화면
いのちの初夜
駅を出て二十分ほども雑木林の中を歩くともう病院の生垣が見え始めるが、それでもその間には谷のように低まった処や、小高い山のだらだら坂などがあって人家らしいものは一軒も見当たらなかった。東京からわずか二十マイルそこそこの処であるが、奥山へはいったような静けさと、人里離れた気配があった。
梅雨期にはいるちょっと前で、トランクを提げて歩いている尾田は、十分もたたぬ間にはやじっとり肌が汗ばんで来るのを覚えた。ずいぶん辺鄙な処なんだなあと思いながら、人気の無いのを幸い、今まで眼深にかぶっていた帽子をずり上げて、木立を透かして遠くを眺めた。見渡す限り青葉で覆われた武蔵野で、その中にぽつんぽつんと蹲っている藁屋根が何となく原始的な寂蓼を忍ばせていた。まだ蝉の声も聞こえぬ静まった中を、尾田はぽくぽくと歩きながら、これから後自分はいったいどうなって行くのであろうかと、不安でならなかった。真黒い渦巻の中へ、知らず識らず墜ち込んで行くのではあるまいか、今こうして黙々と病院へ向かって歩くのが、自分にとっていちばん適切な方法なのだろうか、それ以外に生きる道はないのであろうか、そういう考えが後から後からと突き上がって来て、彼はちょっと足を停めて林の梢を眺めた。