후리가나로 읽는 일본 고전
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
渡辺 温의 アンドロギュノスの裔(アンドロギュノスのちすじ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 129,168자 · 267화면
ねえ、今日からそんなつまらない事は忘れておしまいなさい。きっと忘れてしまわなければいけませんよ。
彼女は四つ折りの白い厚い紙に書いてあるその文句を読んでいる中に、段々胸の中に大きな穴が開いて、そしてその奥から何時ものとはまるで異う泪が湧きあふれて来るのを感じた。
間もなく、青年の言葉通り、赤い煙突は再び煙を吐くことがなくなった。どうしてだか彼女には全くわからなかった。
けれども彼女は、
(――あたしの赤い可哀相な煙突は煙を吐かない。でも、やっぱりそれが本当だわ。……可哀相な煙突!……そして可哀相な可哀相なあたし!)と満足して、泪でぼんやりした眼で、青年のいなくなった西洋館の屋根を眺めた。
十年の歳月が流れてしまった。
彼女の両親はすでに死んでいた。彼女は結婚して、西洋館の隣とは異う家に住んでいた。町端れの、月見ヶ丘に近いところであった。したがって最早や、赤い煙突を可哀相に思うこともなかった。併し、彼女は決して幸福ではなかった。彼女の良人は相当腕のいい機械技師で人間も悪くなかったが、酒を飲むと病弱な妻をひどくいじめた。それに一層悪いことには、彼女は近頃になって、毎日のように執拗な――彼女の肉体の分解が大して遠くはないことを予知させるような熱に襲われて殆ど床をはなれることがなかった。