일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면

아오조라 문고

それに横わると、殆どすべての抵抗がとれて、肉体の疵も魂の疼も自ら少しずつ医されてゆく椅子――そのような椅子を彼は夢想するのだった。その純白なサナトリウムは気に満ちた山の中腹に建っていて、空気は肺に泌み入るように冷たいが、陽の光は柔かな愛撫を投げかけてくれる。そこでは、すべての物の象ががっちりとして懐しく人間の眼に映ってくる。どんな微細な症状もここでは隈なく照らし出されるのだが、そのかわり細胞の隅々まで完膚なきまで治療されてゆく。厳格な規律と、行きとどいた設備、それから何よりも優しい心づかい、……そうしたものに取囲まれて、静かな月日が流れてゆく。人は恢復期の悦びに和らぐ眸をどうしても向うに見える樹木の残映にふりむけたくなるのだ……。

今、あたりは奇妙に物静かだった。いつも近所合壁の寄合う場所になっている表の方の露次もひっそりとして人気がなかった。それだけでも妻はたしかに一ときの安堵に恵まれているようだった。そして、彼もまたあの恢復期の人のように幻の椅子に凭りかかっていた。

彼等二人がはじめてその土地に居着いた年の夏……。その年の夏は狂気の追憶のように彼に刻まれている。