후리가나로 읽는 일본 고전
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면
居着いた借家――それは今も彼の棲んでいる家だったが――は海の見える茫漠とした高台の一隅にあった。彼はその家のなかで傷ついた獣のように呻吟していた。狭い庭にある二本の黐の樹の燃えたつ青葉が油のような青空を支えていて、ほど遠からぬところにある野づらや海のいきれがくらくらと彼の額に感じられた。朝の陽光がじりじりと縁側の端を照りつけているのを見ただけでも彼は堪らない気持をそそられる。すべては烈しすぎて、すべては彼にとって強すぎたのだ。しーんとした真昼、彼は暑さに喘ぎながら家のうちの涼しそうなところを求めていたが、風呂場の流板の上に小桶に水を満たすと、ものに憑かれたようにぼんやりと視入った。小さな器の水ながら、それは無限の水の姿に拡ってゆく。と彼の視野の底に肺を病んで死んで行った一人の友人の姿が浮ぶ。外部の圧迫に細り細りながら、やがて瀕死の眼に把えられたものは、このように静かな水の姿ではなかろうかと……。
奇怪な念想は絶えず彼につきまとっていた。午睡の覚めた眼に畳の目は水底の縞のように朧気に映る。と、黄色い水仙のようなものが、彼の眼の片隅にある。それは黄色いワン・ピースを着た妻であったが、恐水病患者の熱っぽい眼に映る幻のようでもあった。