후리가나로 읽는 일본 고전
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
島崎 藤村의 嵐・ある女の生涯(あるおんなのしょうがい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 47,846자 · 96화면
彼女はまたよくそれを覚えていて、新七のにするつもりでわざわざ西京まで染めにやった羽織の裏の模様や、一度も手を通さず仕舞に焼いてしまったお富の長襦袢の袖までも、ありありと眼に見ることが出来た。もう一度東京へ――娘時分からの記憶のある東京へ――その考えは一日も彼女から離れなかった。それなしには落ちついて坐った気にもなれない黒柿の長手の火鉢も、古い馴染の箪笥も、あの都会の方には彼女を待っているように思われた。
孫達は、と見ると、子供らしい腰につけた巾着の鈴の音をさせながら、子守娘を相手にお三輪の周囲に遊び戯れていた。彼女は半分独りごとのように、
「あの秩父のお山のずっと向うの方が、東京だよ。ずっと、ずっと向うの方だよ。東京は遠いねえ」
やがて新七もいそがしい中に僅かの暇を見つけ、一晩泊りがけで浦和まで母を迎えにやって来てくれた。その翌日は食堂の定休日にあたるというので、お三輪もやや安心して、東京の方へ向う支度をした。彼女はすこし背をこごめ、女のたしなみを失わない程度で片足ずつそこへ出しながら、白い新しい足袋をはこうとした。その鞐を掛ける時に、昔は紐のついた足袋のあったことを思い出した。