후리가나로 읽는 일본 고전
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だんがいのさっかく
断崖の錯覚
黒木 舜平
黒木 舜平의 断崖の錯覚(だんがいのさっかく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 12,483자 · 26화면
ただ、名前を変えたぐらい、なんの罪があるものか。万が一、見つかったとしても、冗談だとして笑ってすませることである。若いときには、誰しもいちどはやることなのにちがいない。そう思って落ちついた。しかし、私の良心は、まだうずうずしていた。大作家の素質に絶望した青年が、つまらぬ一新進作家の名をかたって、せめても心やりにしているということは、実にみじめで、悲惨なことではないか、と思えば、私はいても立っても居られぬ気持であった。けれども、その慚愧の念さえ次第にうすらぎ、この温泉地へ来て、一週間目ぐらいには、もう私はまったくのんきな湯治客になり切っていた。新進作家としての私へのもてなしが、わるくなかったからである。私の部屋へ来る女中の大半は、私に、「書けますでしょうか。」とおそるおそる尋ねるのだった。私は、ただなごやかな微笑をもってむくいるのだった。朝、私が湯殿へ行く途中、逢う女中がすべて、「先生、おはようございます。」と言うのだった。私が先生と言われたのは、あとにもさきにもこのときだけである。
作家としての栄光の、このように易々と得られたことが、私にとって意外であった。