후리가나로 읽는 일본 고전
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にちにちへいあん
日日平安
山本 周五郎
山本 周五郎의 日日平安(にちにちへいあん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 28,297자 · 56화면
「ちょっと待って下さい」と十郎太は記憶をたどった、「――ちょっと考えてみるから」
十郎太はよく考えた。そうしてやがて、紙入は伯父の家に忘れて来た、初めから持って来なかったということを思いだした。
「しまった、なんというばかなことを」
「わかったんですか」
「戻らなければならない」十郎太は掌にある銭を見ながら云った、「――戻るなんて業腹だが、これでは江戸までゆけやしない、これでは三日の道もゆけやしない」
「よかったですね、いま思いだして」と男が勇みたつように云った、「――もっと先までいってからだと大変でしょう、お屋敷はどちらですか」
十郎太は城下町の名を告げた。
「ああそれなら、十里とちょっと戻ればいい」と男は云った、「――藍川で泊れば明日の午前ちゅうには戻れますよ、まったく世の中にはなにが仕合せになるかわからないようなことがあるものですな、ひとつ私もいっしょにゆきましょう」
「貴方が、いっしょにですか」
「乗りかかった船ですよ」と男は衿をかき合せ、脇差を鞘へおさめた、「――ふしぎな縁でこうしてお知りあいになって、貴方がそんな立場に立っているのを黙って見過すほど、私は不人情な人間じゃあありませんからね、それはやがてわかりますよ、ええ、しかしともかく」