후리가나로 읽는 일본 고전
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
山本 周五郎의 春いくたび(はるいくたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 70,094자 · 142화면
月心尼はなにも云わなかった。
草庵へ帰る道はまだ霧に包まれていた。吹き下りて来る濃霧は、彼女の躯を取巻いて渦のように揺れあがり、押戻したり千切れたりしながら流れ去って行った。
月心尼の頬には泪が縞をなしていた。けれど、いま彼女の泣いている顔には、これまでながいあいだ静かな、慈悲の微笑をたたえていたよりも明るく、活々とした望みの色が満ちていた。
「信之助さまは帰って来ます」
月心尼は、いや香苗は、そのかみ信之助と別れた道の上へ来ると、じっと眼を閉じながら呟いた。「……きっと、きっと、信之助さまは此処へ帰っていらっしゃる」
突然、彼女の閉じた瞼の裏へ、あの日の信之助の姿が歴々と浮かんで来た。……別れた直ぐあとでも思い浮かべることの出来なかった信之助の姿が。……香苗はそのとき初めて、信之助を自分の手に取戻したように思った。