후리가나로 읽는 일본 고전
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
島崎 藤村의 桜の実の熟する時(さくらのみのじゅくするとき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 111,569자 · 222화면
誰が半年も一年近くもこんなに同じ事を気に掛けているものがあろう。葬れ。葬れ。忘れ去りたい過去の記憶と共に。こう考えて、玄関の壁に掛けてある古びた額の下に立って見た。その額は田辺の親類にあたる年老いた漢学者が漢文で細かに書いた何とか堂の記だ。その漢学者からは捨吉もまだ少年の時分に詩経の素読なぞを受けたことのある人だ。茶の間の柱のところへも行って倚りかかって見た。客があれば夏でもその上へ座蒲団を敷いて勧める大きな熊の皮の上へも行って寝て見た。その猛獣の身体から剥ぎ取ったような顔面の一部と鋭い爪の附着した、小父さんの自慢の黒々として光沢のある、手触りの荒いようで滑かな毛皮の敷物から身を起した頃は、捨吉は一思いに自分の殻を脱ぎ捨てようと思った。
いっそ焼き捨てて了おう。そう思立って人の見ない裏の空地を撰んだ。三冊の草稿を持出しながら土蔵の前を通り、裏の木戸を開け、例の苺を植えて置いた畠の側へ行って見ると、そこに恰好な場所がある。一方は高い土蔵の壁、一方は荒れた花壇に続いている。その空地に蹲踞むようにして、草稿の紙を惜気もなく引きちぎり、五六枚ずつもみくちゃにしたのを地べたの上に置いては火をかけた。