후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 112,073자 · 223화면
甲斐はそっと胸の傷あとへ手をやった。そうだ、おまえはあのときそう云った。はい、本当だったのです、と宇乃が云うように思えた。わたくし御隠居所でお茶の給仕をしておりました。それはまえに聞いたよ、と甲斐は心のなかで答えた。わたくし杏子の入っているお菓子鉢を、御隠居さまの前へ直そうとしていましたの、すると急に、胸のここのところが、ずきんと、激しく痛んで、持っているお菓子鉢を手から落してしまいました。うん、と甲斐は心のなかで頷いた。母もそう云っていた。宇乃が菓子鉢を落してまっさおな顔になり、大きくみひらいた眼で、どこかをじっとみつめているようすは、ただごととは思われなかった、と母は云った。はい、そうでこざいますの、御隠居さまは、どうなすった、と仰しゃいました。わたくしにはそれがたいへん遠い声のようで、二度めに名を呼ばれるまでは、なにを仰しゃったのかわかりませんでしたわ。そのとき私がけがをしたとは思わなかったのか。わかりません、でも、なにか大変なことが起こった、という感じがして、いつまでも動悸がしずまりませんでした。
宇乃が静かに甲斐を見た。
「日陰が杉の木に届きました」