후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 112,073자 · 223화면
「もみじを見せよう」
少し道が辛いかもしれないが、と云って、甲斐は登り坂のほうへ向かった。
少し風はあるが、よく晴れていて、空気は陽に温められた枯草の香ばしい匂いがした。脆い岩地を削った、勾配の急な坂が、山腹を左へ右へと迂回して登る。したがって、いつもどちらかは切り立ったような崖であるが、そこには樅や杉や樺類の樹々が密生してい、落葉樹の多くは紅葉しはじめていたし、登るにしたがって、その色がはなやかに、色濃くなっていった。
林の中から飛び立った鶫の群が、澄んだ声を張って鳴きながら、谷のほうへと、こぼれるように、舞いおりていった。宇乃は崖の岩のあいだから、眼にしみるような紫色の、小さな星形の花を摘んで、「なんという花でしょうか」と甲斐に訊いた。
「深山竜胆というのだろう」と甲斐が答えた。
宇乃は口の中で復唱して、いい名ですこと、と云った。甲斐は「かしてごらん」とその花を取り、宇乃の髪毛をそっと押えて、その左側の耳の上のところへしてやった。
艶つやとした黒髪に、その花の冴えた紫色がよくうつって「点睛」といいたいほどひきたってみえた。甲斐は満足そうな眼で、ややしばらく宇乃をみまもった。