후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 112,073자 · 223화면
彼はさらに一と握りの雪を口に含み、手拭で濡れたところを拭きながら、寝袋の脇に腰をおろした。
溶けた雪を吐きだすと、甲斐は足袋の上からよく足を揉み、雲沓を出してはいた。そうして、食糧の包みをひらいた。
薄焼(小麦粉を練って延ばし、醤油で焼いたもの)をひと口、それから焙った猪の肉を歯で噛み千切って、ゆっくりと噛み、乾した杏子の一片で味を添えた。猪の肉は時間をかけて焙るから、脂肪とたれがよく肉にしみこんでいるし、しこしこした薄焼の甘味と、少量の杏子の酸味とで、噛めば噛むほど、濃厚で複雑な味が、口いっぱいにひろがるのである。甲斐はそういう食事を好んだ。それが鹿の焙り肉であれば申し分はない。猪や兎の肉でも悪くはないが、韮と葱と人参を刻みこんだたれで、味付けしながら気ながに焙った鹿の肉ほど、甲斐にとってうまい物はない。それはいつも、想像するだけで、口いっぱいになる唾がはしるくらいであった。
――おれは間違って生れた。
と甲斐は心のなかで呟いた。けものを狩り、樹を伐り、雪にうもれた山の中で、寝袋にもぐって眠り、一人でこういう食事をする。そして欲しくなれば、ふじこやなをこのような娘たちを掠って、藁堆や馬草の中で思うままに寝る。