후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 148,519자 · 296화면
――おれは堕落した。
新八は心のなかで思った。これまで、かつてそんな感情を味わったことはなかった。異性に対する漠然とした、あこがれの気持はあった。同じ年の友達のなかには、おとなぶったふりをして、ずいぶん露骨な話しをする者もある。なかには売女と寝たなどといって、誇らしげにそのようすを語る者もいたが、新八には理解もできなかったし、そういうことに興味もなかった。
彼が身ぢかに知っていた女性は、母と一人の姉だけであった。母も姉も亡くなったが、母や姉のところに来る女客のなかに、好きなひとがいて、そのひとが来るとよく母たちの客間へいっては叱られた経験があった。おそらくそれも漠然とした興味、ごく単純な女性というものへの関心という程度であったろうが、それらの人たちには、母や姉とちがった、一種の胸のときめくような感じを、与えられたものであった。
おみやのばあいは、そういう経験とはまったくかけはなれていた。彼はいま、毎日、自分が汚れてゆくように思えるのであった。
――おれはだんだん堕落する、堕落してゆくばかりだ。
新八はそう思った。おみやとの生活はまだ半月くらいにすぎないが、彼を絶えず混乱と羞恥で動揺させた。