후리가나로 읽는 일본 고전
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 江戸情話集(かごつるべ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 203,779자 · 407화면
彼女はやっぱり昔の男が恋しかった。
いったん次郎左衛門に倚りかかろうとした彼女の心は、その時から又がらりと変った。いったん持ち出した身請けの相談も、なるべく口には出さないようにしていた。次郎左衛門が落ちぶれたという話も、なるべく聞かない振りをしていた。彼女はどこまでも今までのお大尽さまとして次郎左衛門を取扱っていた。そこに彼女の冷たい心の忍んでいることを、次郎左衛門はまだ覚らないらしかった。
次郎左衛門を見限ると同時に、彼女はむやみに栄之丞が懐かしくなって、うかうかと起請を焼いたことがしきりに悔まれた。いろいろの手段を尽くして、むかしの恋人を引き寄せようとあせった。その念がふた月越しでようように届いて、眼に見えない糸に引かれたように男が今夜ふらりと来た。彼女は嬉しいので胸がいっぱいになって、次郎左衛門のことなどを話している余地はなかった。
栄之丞から訊かれて、彼女は初めて思い出したように、二月以来、次郎左衛門の足が遠ざかったことを話した。浮橋の噂によると、次郎左衛門は余ほど内証が詰まって来て、茶屋にも借りが出来たらしい。今まで大尽かぜを吹かせていた彼が、廓の人たちの手前、余り落ちぶれた姿を見せたくもあるまい。