후리가나로 읽는 일본 고전
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 江戸情話集(かごつるべ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 203,779자 · 407화면
女中がすぐに八橋のところへ報せに行こうとするのを、次郎左衛門は急に呼び止めた。彼は兵庫屋の二階へ登りたくなかった。
「あ、これ、わたしは少し都合があって、今夜はここで帰るかも知れないから、八橋をここへ呼んでくれまいか」
「まあ、そんなことを仰しゃりますな。茶屋で帰るという法はござりますまい」
女中は笑って行ってしまった。
次郎左衛門は少し目算が狂った。彼は今夜八橋を殺しに来たのである。それには兵庫屋の二階へ刀を持ってゆくことは出来ないので、なるべく彼女を茶屋まで呼び出したかった。一緒に死んでくれと頼んでも、八橋が承知しそうもないことは彼もさすがに知っていた。なまじいのことを言い出して恥をかくよりも、なんにも言わずに不意に切ってしまう方がいいと胸を決めていた。しかし思い切って彼女を切れるかどうだか、次郎左衛門は我ながら少し不安であった。
腕に覚えはある、刀は銘刀である、骨の細い女ひとりを打っ放すのは、なんの雑作もないことではあるが、八橋を切る――それを思うと、彼はなんだか腕がふるわれた。人を切った経験はたびたびある。血を見ることを恐れるおれではないと思いながらも、八橋を切ることは次郎左衛門に取って一生で一度のおそろしい仕事であった。