후리가나로 읽는 일본 고전
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くつかけより
沓掛より
寺田 寅彦
寺田 寅彦의 沓掛より(くつかけより)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 8,751자 · 18화면
一 草をのぞく
浅間火山のすそ野にある高原の一隅に、はなはだ謙遜なHという温泉場がある。ふとした機縁からそこでこの夏のうちの二週間を過ごした。
避暑という、だれもする年中行事をかつてしたことのなかった自分には、この二週日の間に接した高原の夏の自然界は実に珍しいものばかりであった。その中でもこの地方のやや高山がかった植物界は、南国の海べに近く生い立った自分にはみんな目新しいもののように思われるのであった。子供の時分に少しばかり植物の採集のまね事をして、葉のようなものを数十葉こしらえてみたりしたことはあったが、その後は特別に山野の植物界に立ち入った観察の目を向けるような機会もなくて年を経て来た。最近にある友人の趣味に少しかぶれて植物界への注意が復活しかけたのと、もう一つには自分の目下の研究の領域が偶然に植物生理学の領域と接触し始めたために、この好機会を利用して少しばかりこの方面の観察をしようと思ったので、まず第一の参考として牧野氏著「植物図鑑」を携帯して行って、少しずつ、草花の名前でも覚えようと企てた。
毎朝五時には目がさめる。子供や女中などはまだ寝ている間に、宿の後ろの丘の細道や、付近の渓流のほとりを歩いて何かしら二三種の草の花を抜いて来る。