후리가나로 읽는 일본 고전
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しろが
白蛾
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 白蛾(しろが)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 10,700자 · 22화면
住居から谷一つ距てた高台の向う裾を走る省線電車まで、徒歩で約二十分ばかりの距離を、三十分ほどもかけてゆっくりと、岸本省平は毎日歩きました。それは通勤の往復というよりは、散歩に似ていました。道筋も気分によって変りました。
会社の方には殆んど仕事らしいものもなく、出勤時間も謂わば自由でした。戦時中仏印に新らしく設けられた商事会社の、本社とは名ばかりの東京の事務所でありまして、終戦の翌年の四月の末、彼が仏印から帰って来ました時には、もう大体の残務整理もついていて、ただつまらない些末な仕事と、何年先に出来るか分らぬ貿易事業への構想とのうちに、数名の社員が煙草をふかしているのでした。そこへ彼は、毎日だが時間は自由に、顔を出しました。住居は知人の家で、家族が郷里の田舎に移り住んでいますので、ただ一人、六畳と四畳半との二室にのんびりしていました。
そういう閑暇な生活は、四十歳を越した彼には全く新奇なものでした。その上、新帰国者の彼にとっては、環境もすべて新奇に感ぜられました。敗戦後の政治や思潮や風俗の変転などは言うまでもなく、空襲による東京の変貌は想像以上のものがありました。