후리가나로 읽는 일본 고전
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
火野 葦平의 花と龍(はなとりゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 410,131자 · 824화면
大便所に入り、いつもとは逆にしゃがんで、誰かを背負うように、両手を後にまわした。眼をとじて待つと、しばらくして、背に重味を感じた。なにかが、背に乗ったようである。そのままの姿勢で立ち、台所に行った。深夜の静寂を、かるい足音だけが破る。まっ暗の中を足でさぐりながら、井戸端に降りた。井戸の縁に、腰かけた。背中が軽くなる。便所の神が、井戸の神のところへ行ったらしい。
マンは、待った。しいんとした暗黒のどこかで、猫がうごめいている。背筋に、冷たい風がしみこむ。あいびきに行った便所の神は、なかなか、帰って来ない。凄さで、全身が凍るようである。歯を食いしばって、じっとしていると、また、背中が重くなった。マンは、両手を後にまわして立ちあがった。
便所に帰って来た。前と同じようにしゃがむと、背中がスウッと軽くなる。
マンは、藁の便所草履を一つ持った。足音を忍ばせて、金五郎の寝室に入った。
まっ暗で、なに一つ見えない。雷のような金五郎の大鼾が、深夜の空気をふるわせているだけだ。
膝でにじりよったマンは、夫の身体を手さぐりすると、そっと、草履を、胸のうえに乗せた。
そして、息をのんで、なにごとがはじまるかを待った。