후리가나로 읽는 일본 고전
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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
江戸川 乱歩의 陰獣(いんじゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 66,968자 · 131화면
一銭蒸汽と云った時代からの隅田川の名物で、私はよく、用もないのに、あの発動機船に乗って、言問だとか白鬚だとかへ往復して見ることがある。汽船商人が絵本や玩具などを船の中へ持込んで、スクリウの音に合わせて、活動弁士の様なしわがれ声で、商品の説明をしたりする。あの田舎田舎した、古めかしい味がたまらなく好もしいからだ。その汽船発着所は、隅田川の水の上に浮んでいる、四角な船の様なもので、待合客のベンチも、客用の便所も、皆そのブカブカと動く船の上に設けられている。私はその便所へも入ったことがあって知っているのだが、便所と云っても婦人用の一つきりの箱みたいなもので、木の床が長方形に切抜いてあって、その下をすぐ、一尺ばかりの所を、大川の水がドブリドブリと流れている。丁度汽車か船の便所と同じで、不潔物が溜る様なことはなく、綺麗と云えば綺麗だが、その長方形に区切られた穴から、じっと下を見ていると、底の知れない青黒い水が澱んでいて、時々ごもくなどが、検微鏡の中の微生物の様に、穴の端から現われて、ゆるゆると他の端へ消えて行く。それが妙に無気味な感じなのだ。
三月二十日の朝八時頃、浅草仲店の商家の若いお神さんが、千住へ用達しに行く為に、吾妻橋の汽船発着所へ来て、船を待合せる間に、今の便所へ入った。