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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
千三は仰天して思わず大地にひざまずいた。このとき行列が静々とお通りになる。
「まっ先にきた小桜縅のよろい着て葦毛の馬に乗り、重籐の弓を持ってたかの切斑の矢を負い、くわ形のかぶとを馬の平首につけたのはあれは楠正行じゃ」
とおじいさんがいった。
「ああそうですか、それと並んで紺青のよろいを着て鉢巻きをしているのはどなたですか」
「あれは正行の従兄弟和田正朝じゃ」
「へえ」
「そら御輿がお通りになる、頭をさげい、ああおやせましましたこと、一天万乗の御君が戦塵にまみれて山また山、谷また谷、北に南に御さすらいなさる。ああおそれ多いことじゃ」
おじいさんは頭を大地につけてないている、千三は涙が目にたまって玉顔を拝むことができなかった。
「御輿の御後に供奉する人はあれは北畠親房じゃ」
「えっ?」
千三は顔をあげた。
赤地にしきの直垂に緋縅のよろい着て、頭に烏帽子をいただき、弓と矢は従者に持たせ、徒歩にて御輿にひたと供奉する三十六、七の男、鼻高く眉秀で、目には誠忠の光を湛え口元には知勇の色を蔵す、威風堂々としてあたりをはらって見える。
千三は呼吸もできなかった。
「いずれも皆忠臣の亀鑑、真の日本男児じゃ、ああこの人達があればこそ日本は万々歳まで滅びないのだ」