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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「野球は午後ですから、朝だけぼくは売りにでます」

「いやかまわない、わしもおひるからは見物にゆくぞ、しっかりやってくれ」

「ありがとう伯父さん、それじゃ今日は休ましてもらいます」

「うむ、うまくやれよ、金持ちの学校に負けちゃ貧乏人の顔にかかわらあ」

伯父さんはこういってらっぱをぷうと鳴らしてでていった。千三は井戸端へでて胸一ぱいに新鮮な空気を呼吸した、それからかれはすっぱだかになって十杯のつるべ水を浴びて身をきよめた。

「どうぞ神様、ぼくの塾をまもってください」

じっと目を閉じて祈念するとふしぎにも勇気が次第に全身に充満する。朝飯をすまして塾へゆくと安場がすでにきていた。一分時の違いもなく全員がうちそろうた。そこで先生が先頭になって調神社へ参詣する、それから例の空き地へでて猛烈な練習をはじめた。

春もすでに三月のなかばである、木々のこずえにはわかやかな緑がふきだして、桜のつぼみが輝きわたる青天に向かって薄紅の爪先をそろえている。向こうの並み木は朝日に照らされてその影をぞくぞくと畑道の上に映していると、そこにはにわとりやすずめなどが嬉しそうに飛びまわる。

昨夜熟睡したのと、昨日一日練習を休んだために一同の元気はすばらしいものであった、安場はすっかり感激した。