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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と豊公は嗟嘆した。「いい着物を着ておいしいものを食べて学校へ遊びにゆく、貧乏人は朝から晩まで働いて息もつけねえ、本を読みかけると昼のつかれで眠ってしまうしな」

「きみ、お父さんがあるの?」とチビ公がきいた。

「ないよ、きみは?」

「ぼくもない」

「親がないのはお金がないよりも悲しいことだね」

「それにぼくは力がない、きみは力があるからいいさ」

「力があってもだめだ」と豊公は急に腹だたしく、「おれは毎朝生蕃になぐられるんだ、そしていもだの豆だのなしだのかきだのぶんどられるんだ、それでもおれはだまってなきゃならない」

「ぼくも毎朝豆腐を食われるよ、きみなぞは力があるからなぐりかえしてやるといいんだ」

「だめだよ」と豊公はあやうくこぼれようとする涙をこらえていった。「あいつのお父さんは役場の役人だろう」

チビ公はだまって溜め息をついた。向こうではいま手塚が得意になって活動弁士の口まねをしていた。

「主はだれ、むらさきの覆面二十三騎くつわをならべて……タララララタ、タララララタ、プカプカプカララララララ」

「うまいぞうまいぞ」と一同が喝采した。

「もう一つもう一つ」

手塚は得意になってうぐいすのなき声、やぎ、ペリカン、ねこ、ねこが屋根から落ちて水たまりにぴしゃりとおちた音などをつづけざまにやった。