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あすへのわだい

あすへの話題

中谷 宇吉郎

「日本経済新聞」1956(昭和31)年5月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,402 字 · 7 页

青空文庫

重力を絶ち切る話

重力を絶ち切る話

このごろ、あまり意外なことが、つぎつぎと出て来るので、たいていのことには、そう驚かなくなった。ところが、最近全く奇想天外な話をきいて、大いに度胆を抜かれた。それは重力を絶ち切る研究の話である。

宇宙旅行は、目下、世界的なブームであるが、現実味が少しでもある話は、皆ロケット、あるいは類似のものである。

しかしロケットでは、もう古くなったので、空想小説や、いわゆる科学空想映画では、重力を絶ち切る装置を造って、それで自由に空間を飛翔する話が、ちょいちょい出て来ている。

話としてはちょっとおもしろいが、これはもちろん架空の話で、重力を絶ち切るなどということは、現代の物理学では、夢にも考えられないことである。それで「宇宙征服」流のこの種の映画に対しては、科学関係の人間は、単におもしろがって、笑ってすませて来たわけである。私なども、もちろんその一人で、その可能性如何についてすら、考えてもみなかった。

ところが、アメリカでは、大真面目になって、この研究をやっている科学者がいることを、最近知って、大いに驚いた。グレン・マーチンというアメリカ屈指の大航空機会社が、マリランドの大学へ、この委託研究を出している、という話なのである。