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あそび

あそび

森 鴎外

「三田文學」1910(明治43)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,358 字 · 21 页

青空文庫

そして多少の興味を殺がれる。自分だってその境に身を置いたら、土嚢を翳して匍匐することは辞せない。しかし壮烈だとか、爽快だとかいう想像は薄らぐ。それから縦い戦争に行くことが出来ても、輜重に編入せられて、運搬をさせられるかも知れないと思って見る。自分だって車の前に立たせられたら、挽きもしよう。後に立たせられたら、推しもしよう。しかし壮烈や爽快とは一層縁遠くなると思うのである。

ある時は航海の夢も見る。屋の如き浪を凌いで、大洋を渡ったら、愉快だろう。地極の氷の上に国旗を立てるのも、愉快だろうと思って見る。しかしそれにもやはり分業があって、蒸汽機関の火を焚かせられるかも知れないと思うと、enthousiasme の夢が醒めてしまう。

木村は為事が一つ片附いたので、その一括の書類を机の向うに押し遣って、高い山からまた一括の書類を卸した。初のは半紙の罫紙であったが、こん度のは紫板の西洋紙である。手の平にべたりと食っ附く。丁度物干竿と一しょに蛞蝓を掴んだような心持である。

この時までに五六人の同僚が次第に出て来て、いつか机が皆塞がっていた。八時の鐸が鳴って暫くすると、課長が出た。