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あそび
あそび
「三田文學」1910(明治43)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,358 字 · 21 页
しかし課長の出るのは八時三十分頃だから、八時までに役所へ行けば好いと思う。
そして頗る愉快げな、晴々とした顔をして、陰気な灰色の空を眺めている。木村を知らないものが見たら、何が面白くてあんな顔をしているかと怪むことだろう。
顔を洗いに出ている間に、女中が手早く蚊※(「巾+廚」、第4水準2-12-1)を畳んで床を上げている。そこを通り抜けて、唐紙を開けると、居間である。
机が二つ九十度の角を形づくるように据えて、その前に座布団が鋪いてある。そこへ据わって、マッチを擦って、朝日を一本飲む。
木村は為事をするのに、差当りしなくてはならない事と、暇のある度にする事とを別けている。一つの机の上を綺麗に空虚にして置いて、その上へその折々の急ぐ為事を持って行く。そしてその急ぐ為事が片付くと、すぐに今一つの机の上に載せてある物をそのあとへ持ち出す。この載せてある物はいつも多い。堆く積んである。それは緩急によって畳ねて、比較的急ぐものを上にして置くのである。
木村は座布団の側にある日出新聞を取り上げて、空虚にしてある机の上に広げて、七面の処を開ける。文芸欄のある処である。