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あそび

あそび

森 鴎外

「三田文學」1910(明治43)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,358 字 · 21 页

青空文庫

の心持が、ノラでない細君にも、人形にせられ、おもちゃにせられる不愉快を感じさせたのであろう。

木村のためには、この遊びの心持は「与えられたる事実」である。木村と往来しているある青年文士は、「どうも先生には現代人の大事な性質が闕けています、それは nervosit です」と云った。しかし木村は格別それを不幸にも感じていないらしい。

夕立のあとはまた小降になって余り涼しくもならない。

十一時半頃になると、遠い処に住まっているものだけが、弁当を食いに食堂へ立つ。木村は号砲が鳴るまでは為事をしていて、それから一人で弁当を食うことにしている。

二三人の同僚が食堂へ立ったとき、電話のベルが鳴った。給仕が往って暫く聞いていたが、「少々お待下さい」と云って置いて、木村の処へ来た。

「日出新聞社のものですが、一寸電話口へお出下さいと申すことです。」

木村が電話口に出た。

「もしもし。木村ですが、なんの御用ですか。」

「木村先生ですか。お呼立て申して済みません。あの応募脚本ですが、いつ頃御覧済になりましょうか。」

「そうですなあ。此頃忙しくて、まだ急には見られませんよ。」

「さようですか。