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あそび

あそび

森 鴎外

「三田文學」1910(明治43)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,358 字 · 21 页

青空文庫

今読んだのはそれとは違う。文芸欄に、縦令個人の署名はしてあっても、何のことわりがきもなしに載せてある説は、政治上の社説と同じようなもので、社の芸術観が出ているものと見て好かろう。そこで木村の書くものにも情調がない、木村の選択に与っている雑誌の作品にも情調がないと云うのは、木村に文芸が分からないと云うのである。文芸の分からないものに、なんで脚本を選ばせるのだろう。情調のない脚本が当選したら、どうするだろう。そんな事をして、応募した作者に済むか。作者にも済むまいが、こっちへも済むまいと、木村は思った。

木村は悪い意味でジレッタントだと云われているだけに、そんな目に逢って、面白くもない物を読まないでも、生活していられる。兎に角この一山を退治ることは当分御免を蒙りたいと思って、用箪笥の上へ移したのである。

書いたら長くなったが、これは一秒時間の事である。

隣の間では、本能的掃除の音が歇んで、唐紙が開いた。膳が出た。

木村は根芋の這入っている味噌汁で朝飯を食った。

食ってしまって、茶を一杯飲むと、背中に汗がにじむ。やはり夏は夏だと、木村は思った。

木村は洋服に着換えて、封を切らない朝日を一つ隠しに入れて玄関に出た。