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あのかお

あの顔

大倉 燁子

「ロック 三巻六号」1948(昭和23)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,009 字 · 22 页

青空文庫

「なら何故ほんとの話をなさらないんです。せめて僕にだけ、――僕を信用して僕にだけ真実を語って下さるならば、僕は誓ってそれを漏らしもしないし、永久の秘密として葬ると同時に、弘さんのために極力尽力もしましょうし、また、あなたをも救って上げます。あなたをも、但し、――あなたが強情を張って、飽くまで自分に都合のよいような創作話をされるならば、この弁護はお断りいたすほかありません」ときっぱりと云った。

浪子は憤然としていたが、やがて、彼の足許にひれ伏すように両手をついて、

「すみません。先生まで欺こうとした私は何というお馬鹿さんでしょう。先生、私は神父様へは真実の告白をしました。赤ン坊を殺したのは私です。にっこりと笑ったあの顔、――あああの顔が、こんな罪をつくってしまったのです。あまりにも妾に似ていたので憎悪の念がむらむらと湧き、その羽二重のような柔かい頸に手が触れると、あとはもう何もわからなくなってしまいました。気がついた時、赤ン坊は死んでいたのです、そこへ弘さんがやって来たので私は愛子を戸棚にかくしました。極度に興奮していたのと、弘さんに見られなかったかという不安とで、私は気狂いのようになり、無茶苦茶に悪口を彼に浴びせかけたのです。