轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あのかお
あの顔
大倉 燁子
「ロック 三巻六号」1948(昭和23)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,009 字 · 22 页
1
1
刑事弁護士の尾形博士は法廷から戻ると、久しぶりにゆっくりとした気分になって晩酌の膳にむかった。庭の新緑はいつか青葉になって、月は中空にかかっていた。
うっすらと化粧をした夫人が静かに入って来て、葡萄酒の瓶をとりあげ、
「ずいぶん、お疲れになったでしょう?」と上眼使いに夫を見上げながら、ワイン・グラスになみなみと酒を注いだ。
「うむ。だが、――長い間の責任をすましたので、肩の荷を下したように楽々した」
「そうでしょう? 今日の弁論、とても素晴らしかったんですってね。私、傍聴したかった。霜山弁護士さんが先刻おいでになって、褒めていらしたわ、あんな熱のこもった弁論を聴くのは全く珍らしい事だ、あれじゃたとえ被告が死刑の判決を下されたって、満足して、尾形君に感謝を捧げながら冥土へ行くだろうって、仰しゃっていらしたわ」
「霜山君はお世辞がいいからなアハ……。しかし、少しでも被告の罪が軽くなってくれればねえ、僕はそればっかり祈っている」
「あなたに救われた被告は今日までに随分おおぜいあるんでしょうねえ。刑事弁護士なんて云うと恐い人のように世間では思うらしいけれど、ほんとは人を助ける仕事で、仏様のようなものなんですからね」