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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

というのは、若しも彼が青沼を頼って味方になって貰うものなら、親友は彼自身とともに彼の敵の的にならなければならない。

これは断乎とした論理を含んでいる。

可笑味のある馬鹿気たことではないのである。

それにしても彼は自分が盗みをしようとした考えにこだわっていて、それが看破されたことを恐れているのであろうか。

否、彼はすでに愚鈍な技巧と真面目くさった態度の倫理家の妄語に苦しめられてはいない。

しかし彼は自分へ対する言訳には、抵抗出来なくなっている。

否、それはちょうど、偶然の出来事か、記憶を去ろうまいとする考えかが、いずれにしても一瞬はそれらの生命を保って、人間精神のなかへ、一生に一度ぐらいは巣喰うてみようとするその輪廓のない生物によって起させられる或印象と等しい価値を持っているものであるかも知れない。

しかしそんなことはもうどうでもいいことになっている――……雨! 雨! 雨よ降れ、降れ! あの兇鳥が吐き出すおれの悪口を土のなかへ葬むるように強く降れ! おい、追放された憐れな雨!……――彼は雨が彼自身ででもあるかのように呟いていた。

――……お前はいま涯しない虚空を失おうとしている。